『苦しかったときの話をしようか』の感想
本日はUSJの再建で有名な森岡さんの著書である『苦しかったときの話をしようか』の感想を書いてみた。
大学生活も後半に入り就職活動が近づいてきたお子さんに対して、キャリア感や面接への向かい方、やがて訪れるであろう仕事での苦しい場面などへの自身の考え=パースペクティブが綴られている。
つい話に熱が入りがちな森岡さんが、「文章ならば!」としたためていたものだったが、たまたま編集者が読んだところあまりにも内容が良かったので、すべてのキャリアに悩む人に届けるべきだということで出版に至ったそうだ。
就活生から転職を考えていたり、今まさに困難にぶつかっているようなすべての人たちに向けられた書籍ではないか。
その中でいくつか記憶に残ったポイントを紹介したい。
苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」
- 作者: 森岡毅
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2019/04/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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自分の強みをT・C・Lで理解する
森岡さんいわく仕事において自分の強みは大きく3つに分けられる。
- Thinking:考える力・戦略性
- Communication:伝える力・人と繋がる力
- Leadership:変化を起こす力・人を動かす力
ポイントはこのT・C・Lの3つの中で、相対的に自分がどのポイントにおいて秀でているかを自覚することだ。
自分自身を振り返るとやはり1.Thinkingだろう。知らない人と話すの得意じゃないし、輪の中心でリーダーになりたいと思わないし。やはり相対的に比べてみるのであれば、自分はT型だと思う。
ちなみにこのT型は向いている職業はマーケティングや企画職、コンサルタントということで、確かに今の自分の職種とは合っている。
ただしこのT型は自分が仕事で考える対象を、興味を持てる領域を選ぶことが重要だとも言っている。確かに興味の無い分野に思考力を注ぎ続けることは苦痛だ。僕も最近転職してコンサルになって、言われた仕事をこなすことで精一杯になっていたが、改めて何の領域にチャレンジしたかったのかを思い出した。
自分をマーケティングする
強みをもとに自分をマーケティングするという観点も重要だ。
なぜなら自分自身の「My Brand」を作ることで以下のメリットが生じる。
- 仕事や面接で話す時に緊張から開放される
- 自分のキャリア戦略における指針ができる
- 作った自分のブランドの設計図に中身が追いつくと市場価値が高まる
ブランド設計図は以下を設定すると完成となる。
攻略する市場
WHO(戦略ターゲット・コアターゲット)
WHAT(ベネフィット・RTB)
HOW(ベネフィットを提供する手段・ブランドキャラクター)
また作ったブランドは以下の観点からチェックを行う必要がある。
valuable:面接を受ける受ける・所属する企業にとって価値があるか?
believable:信じられる根拠(RTB)は十分か?RTBは十分か?
distinctive:他の候補者と比べて埋もれないか?
cogruent:自分の本質と一致しているか?
新しい環境では自分が最後尾だと思う
これは森岡さんが社会人デビューしてP&Gに入社した時の話。これまでの環境では優秀だった自分が新卒で働き始めた時に価値を出せず、電話が取れなくなるくらいに追い詰められていたそうだ。
特にいわゆる高学歴に人に多いと思うが、ここで潰れないためにも大事なことがある。それは最初から肩の力を抜いて、最後尾からスタートする自分を予めイメージして受け入れておくことではないか。
その上で本当の努力をどれだけ積み重ねられるか。理想の現実の自分のギャップは、貪欲に学ぶ姿勢と数年に満たない時間がきっと埋めてくれるのではないか。
自分自身も未経験職種としてコンサル転職したばかりですが、正直全くバリューが出せていません。資料作成の精度や速さ、3年も働いていてこんな事もできない、気づかないのかと情けなくなる日が最近多い。
ですがこの本を読んでいて、そもそも自分のプライドが高いことを改めて実感しました。「指摘されたことは一つ一つ受け止め、知らないことは学んでいかなければ」と改めて思う。
行動を変えたい時のコツ
最後に行動を変えたい時のコツです。明日から変わるぞ!これをするぞ!なんて思っても、実際には布団から出れなかったり、まあ今日の分はあしたやろうとか、できない理由を探すのが人の常だ。
僕もアナザースカイの前田裕二さん出演回を見て、同じように5時半出社、1時帰宅の生活にチャレンジしてみようと思いましたが。あくる日の土曜に起きたのは8時半でした。ダメダメやん。
森岡さんはその理由は変わろうとする自分の意識と、その行動を神経回路が覚えるまでのタイムラグに耐えられない。つまり習慣化は単なる意識だけの問題ではなく、物理的な問題だからです。その間に変われない自分に嫌になり、結局何かを続けることを諦めてしまうのです。
だから最初からすぐに変われない自分を受け入れる。まずは5回に1回くらいできれば、自分を褒めてあげる。するといつの間にか2回、3回と目的の行動を取れる確率が上がっっていき、数ヶ月するとそれは習慣に変わっているはず。
もちろんこの変化を周囲や上司が待ってくれることは稀かもしれない。でも本当に変えたいことがあるなら、この人間の神経という機能との孤独な戦いを耐え忍ぶしかないのである。
おわりに
本来は就活生に向けられて書かれた本だが、転職を考えている人や転職したばかりの人にも大きな発見がある本だと思う。
新しい環境に慣れることに必死になる自分もいるだろうが、一息つきながら自分のキャリアや今会社で築くべきブランド、うまく行かない時の心構えなどを考えておいてもいいのではないか。
インタビューなどでは刀のように鋭い森岡さんだが、その仕事人としての核にある真摯さや優しさを感じる1冊ではないか。