「Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25」:ファンとアーティストには同じ時が流れている
遂にデビューしました、東京ドーム。
別に野球が好きなわけじゃありません。
見に行ったのは巨人ではなく、大人で子供。
デビュー25周年を祝うツアー「DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25」でした。
ライブ当日からは少し遅くなってしまった。だけど忘れたくない。
そんな夜を書き留めて置こうと思い、少しだけキーボードを叩いてみました。
ファンとアーティストには同じ時が流れている
僕は京都に来た大学1年の頃から、毎年ミスチルのライブに行くことを目標にしていた。
2012年の20周年ライブの時は、名古屋まで友人と2人で遠征に出かけ、終電で必死に帰ってきた。
ライブ自体が久しぶりだったこともあるが、当時の僕はその幻想的で華麗で熱狂的な空間に圧倒された。凝縮された音と言葉と映像のエンターテインメントが真正面からぶつかってきた。
中学の頃はポケットの中のウオークマンに詰め込まれていたはずの歌と声。そして櫻井さんが、その瞬間確かに目の前に存在した。
客席からステージまでの150メートルも存在しないくらいに、Mr.Childrenを近くに感じた。
やっぱり小市民である僕らにとって、アーティストとはどこか遠い存在だ。ともすれば、ステージやテレビの上の虚構の存在とも感じられる時もあるかもしれない。
しかしこうやってライブに足を運ぶたびに、自分とミスチルにだって同じ時が流れていると確信できる。僕だって年をとり、ミスチルだって年を取っていくのだ。
両親や恋人、好きな芸能人やファンのアーティストとか。
何であれ、人生を共に並走していると思える誰かがいるからこそ、人は時の流れを感じることができる。だからこそ、想い出には“彩り”が加えられるのではないだろうか。
かつて大学の門出と同時にミスチル20週年を祝い、今こうして社会人の門出にまた25周年を祝えていることが素直に嬉しい。
またいつか彼らのライブに訪れる時、僕はこの社会人1年目をきっと思い出すだろう。
1999年、夏、沖縄
今回のライブで最も印象的だったのはこの曲だ。
意外という人も多いかもしれない。innocent worldでもなく、終わりなき旅でもない。
『1999年、夏、沖縄』である。
最後の曲が終わり 音がなり止んだ時 あぁ僕はそこで何を思ったのだろう
選んだ路とはいえ 時に険しくもあり 些細な事で僕らは泣き笑う
いろんな街を歩き いろんな人に出会う これからだってそれはそうなんだけど
そして今想うことは たった一つ想うことは
あぁ いつかまたこの街で歌いたい
あぁ きっとまたあの街でも歌いたい
あぁ そして君にこの歌を聞かせたい
実はこの曲、初めて見たポップザウルス2012でも披露されていた。
当時は「何でこんな地味な曲なんだ!? ミリオンヒットを聞かせろ!」
なんて思いつつも、いい歌だなぁと聞いていた、
しかし5年が流れ25周年で改めてこの曲を聞くと、前回とは全く異なる印象を受ける。
それは、僕にとっては「キャリアの終わり」をイメージさせるものだったからだ。
「10周年のときはインタビューとかで『10周年をむかえてどうですか?』って聞かれても『それは事務所とかレコード会社が盛り上げてるだけですから』みたいなこと言ってて、本当にそう思っていて、今僕たちの音楽を聴いてくれている人もいつかは離れていくんだって思ってた。でも25年経っても、これだけの人が聴いてくれている」
眼前に訪れた多くのファンへ感謝を告げながら、櫻井さんはそう告げた。涙をこらえているようにも見えた。
ここからはあくまで想像の域をでないが、櫻井さん自身、Mr.Childrenというバンドの終わりを意識し始めたのではないだろうか。
25年。それは1バンドとしては長く深く積もったキャリアだ。ベストアルバム4枚でも語りきれない歴史がある。
だがもう櫻井さんも47歳になる。
サラリーマンなら管理職だ。
キャリア晩年の50代をどう過ごそうか考え始める時期になる。
きっとそこには、あと何年このバンドを続けられるのかという苦悩や恐怖があるのではないだろうか。
一方で一過性の人気に終わることなく、「ここまで慕ってくれてきたファンやリスナーのために音楽を届けたい」という純粋な喜びも存在するはずだ。
そうした感情が、近年の積極的なライブ活動に結びついているのではないだろうか。
「いつか来る最後の瞬間まで、応援してくれる人のために音楽を届けたい」
そんなメッセージが、薄っすらと東京ドームの中に広がっていった気がした。
キャリアは生まれた時から死んでいく
では果たして僕は、最後の仕事が終わり、キャリアを終える時、何を思えるだろうか。
もちろんまだ働き始めて4ヶ月だ。いやOJTである以上まだ働いているとさえ言えないかもしれない。
だけど僕だっていつか、サラリーマンを辞める日は来る。
ミスチル風に言えば、キャリアは「生まれた日から死んでく」のだ。もうそれからは逃れようがない。だけどその時に向かって、僕は日々の仕事に全力に取り組めているだろうか。
もちろん手を抜きサボることは悪ではない。要領の良さは個人的には大事だと思う。
しかしこの曲で僕はMr.Childrenから、こう問いかけられたように感じた。
「俺は25年目でこう思えたぜ。君はどうだろうな」
彼らは今日も歌う。今日も奏でる。
1回1回の残されたライブに全力を尽くす。
あぁ、なんだか背中を押された気分だ。
僕ももうちょっと。もうちょっと頑張ってみるかなぁ。
25年後のことなんて何もわからない。だけど25年後、彼らと同じ景色が見たい。
そんなことを考えているうちに、今日だって日は昇る。仕事が始まる。
サンキュー、ミスチル。